しばしば痴呆症の患者は、自分で自分を知ることができないため、身近な他人を見つめて自分を知ろうとします。そのため、患者は他人(スタッフ)の行動や言動に対して非常に敏感です。スタッフのその場限りのごまかしは、患者の不信感をあおり、問題行動を引き起こす原因となります。そのため、治療者は自分の性格や行動を分析し、理解しておく必要があります。「自分を知る」ことが臨機応変な対応を身につける手がかりにとして役立つはずだと思います。私は「自分は常に他の職種と関わりながら療法活動を行っている」ということをよく感じます。そして自分の知識や経験だけでなく、その患者に関わってくる全体をとらえることにより、患者を自分の枠の内に閉じ込めてしまうような評価を避けることが出来ると思います。「知識」とは、あらゆる問題に対処出来る選択肢を増やすものであり、「経験」とはそこから個性を出すために必要なものであると思います。

 

痴呆患者と一緒に過ごしている時間、スタッフはスタッフでなくなるときがしばしばあります。患者のフィルターを通した「自分」の姿は、必ずしもそのままの「自分」という姿ではありません。ある人にとっては「自分」は子供や孫であったり、はたまた親や姑、患者の貯金をねらう悪人なのかも知れません。そこで必要なのは、闇雲に「職員・先生である」事実を分からせる事ではなく、それに合わせる(同調する)ことです。

 

 もくじ/高齢者への音楽療法の意義/音楽療法とは/「音楽教育」と「音楽療法」〜セラピストとは〜/現場における自己の存在/新入社員のための研修資料1/歴代歌謡曲ベスト3/職場内研修「ノーマライゼーション」/新入社員のための研修資料2/言語聴覚司法制定までの動き/院内音楽療法勉強会レジメ/豊かな感性と接遇